知能検査WAIS-IIIの結果と発達障害
発達障害や知的障害が疑われる患者に精神科で行う検査にウェクスラー式知能検査WAISⅢというものがある。
僕はADHD(注意欠陥多動性障害)の疑いがあり、この検査を受けた事がある。臨床心理士の立会いの元、2時間程度で多様な14項目を検査するもので、非常に集中力を要した。
検査結果の詳細は以下のようなものだった。
一見良好に見える検査結果だったが、検査に立ち会った臨床心理士からは「非常に生き辛さを感じる知能傾向にある」といった趣旨の言葉と共に「コミュニケーション能力が比較的低く、話相手との意思疎通において齟齬が生じやすい」といった指摘を受けた。医師からは、この検査結果とチェックリストから、軽いADHD/ASDの傾向があるが、日々の努力で克服することができる所謂グレーゾーンであり、薬物治療をするかの判断は僕に委ねると言われた。
元々、コミュニケーション能力が低いという自覚はあったし、生き辛さは常々感じていた。そのため、特に驚きは無かった。ただ、どこからその指摘事項を導き出したのか気になった。しかし、それ以上詳しくは教えては貰えなかった。
僕は家に帰るなり、CiNii BooksでWAISⅢの検査方式や解釈事例の書籍がある大学図書館を探した。自分で詳細を調べる事にしたのだ。幸い、家の近くの心理学科のある大学にWAISⅢに関する蔵書が多数あったので、すぐさま調べに向かった。合わせて、ネットに掲載されているWAISⅢに関する情報も参考にした。
分かったのは、以下の通りだ。
- 数値の高さはさして重要ではなく、各検査・群指数のバランスが重要であること。一般的に、各群指数の差が15以上ある場合、何かしらの発達障害が疑われるとのこと。僕の場合、作動記憶と知覚統合には30と際立った差があった。WAISⅢ理論マニュアルによると、30差以上の出現頻度は4%を切っていた。
- 同様に各群指数に際立った差がある場合、低い群指数に足を引っ張られる形で、生き辛さを感じる傾向があること。
- 作動記憶の低さ、特に数唱・語音が低い事は、聴覚的な短期記憶能力が劣っていることを示しており、耳で聞いたことを忘れたり間違えたりする傾向が強いこと。
耳で聞いたことを忘れたり聞き間違えたりする傾向が強いことに関しては、実際私生活や仕事でネックになることが多々あった。例えば、
- 電話応対中に相手の名前や要件を聞き漏らしてしまい何度も聞き返えしてしまう。
- 大人数での会話が苦手で会議中の議論を追いきれず、議事録に抜け漏れが発生する。
- 聞いた曲の歌詞が覚えられず、カラオケなどで歌うのが苦手。(音痴で苦手なのではない)
などが挙げられる。
また、書籍を参考に各検査結果からプロフィール分析を用いて、より詳細な能力の凹凸を調べてみると以下の結果が出てきた。
自分の苦手な事を再認識できたという意味では、ウェクスラー式知能検査を受けた意味はあったのかなと思う。保険適用なら2000円弱で受けられるものなので、気になる方は検査をお願いしてみてはどうだろうか。
参考書籍
Wais-3 Administration and Scoring Manual
- 作者: Wechsler
- 出版社/メーカー: Psychological Corp
- 発売日: 1997/01/01
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